長崎消息
長崎県教職員組合の月刊誌「長崎消息」の連載
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歌に誘われて@
「グレープの精霊流し」

 その数が、1700とも2000とも言われる長崎の歌。思い浮かべてみると、私が楽譜を見ないで伴奏できそうな曲だけでも、20曲近くあります。32曲あるベートーヴェンのピアノソナタも、暗譜で弾ける曲は数曲しかないと言うのに。
「歌で巡る長崎」の中で、宮川密義氏は、ヒット曲からみると、東京、北海道に続いて長崎がランキング第3位に登場するのではないかと書かれています。しかし私の実感としては、こんなに多くの印象的な歌があるのは、長崎が一番ではないかしら、と常々思っています。
  私の故郷、長野県も海はありませんがアルプスを始め自然が美しい所です。もちろん「信濃の国」という、県民なら多分誰でも歌える、しかも6番まである県歌はありますが、日本人ならそのメロディーを知っている「長崎は今日も雨だった」とか「長崎の鐘」などに匹敵する曲は、残念ながらありません。更に、その歌を聴いただけで、その土地を訪ねてみたいと思わせる歌は、全国的に見てもそんなに多くはないでしょう。

 昭和49年、当時私は大学生で、朝は上野公園のパンダに挨拶をし、夕方は上野文化会館で開催される外来演奏家のポスターをお金があったら聴きたいな、と恨めしく眺めながら大学に通っていました。ちょうどその頃ヒットしていたのが、グレープの精霊流し。「約束通りにあなたの嫌いな 涙は見せずに過ごしましょう」のフレーズが印象的で、いつか長崎に旅行をして、浴衣を着て精霊流しを一人静かに眺めよう、そんな事を漠然と思っていました。(精霊流しがこんなにも賑やかで、その上、まさか長崎で仕事をすることになると、当時は思ってもいませんでした)
  この精霊流しですが、最初が物悲しい短調で始まり、中間部のサビの部分では長調に転調して盛り上がり、再び短調に戻ります。当時の歌謡曲としてこの構成は新鮮で、美しい音階風のメロディーとともに、いつまでも心に残るメロディーでした。

 さて、昨年始まったながさき音楽祭。記録集も出来上がり、そこには2ヶ月間の奮闘が収められています。現在企画委員会を中心に、開催予定地区との協議を重ね、2年目のながさき音楽祭のプランが練られています。言うまでもなく音楽は、クラシックばかりではありません。ジャズもロックも、演歌も邦楽も音楽のファミリーです。昨年の音楽祭が、室内楽を核にしたどちらかというとクラシック中心の構成だったので、今年はジャンルを広げる試みがなされています。
  そのひとつ、「長崎のうた、長崎の音(仮称)」企画が現在進められています。長崎はまさしく歌の宝庫です。その上、長崎の街は魅惑的な「音」に溢れています。朝の教会の鐘の音、夕暮れの海を渡る霧笛の音、そして蛇踊りの爆竹の音に、他県から長崎に移り住んだ者は、異国情緒あふれる街・長崎を実感します。
そんな長崎をテーマにした歌を、長崎の財産として整理しながら、歌に込められた情緒とともに、歌い継いでいきたいと願っています。「歌に誘われて」。しばらくの間、長崎の歌の旅にお付き合い下さい。

(長崎県音楽連盟 堀内伊吹)
(長崎消息2008年3月号から)