長崎消息
長崎県教職員組合の月刊誌「長崎消息」の連載
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歌に誘われてB
「クールファイブの長崎は今日も雨だった」

 1839年、ピアノの詩人ショパンは病気療養のため、ジョルジュサンドとともに、マジョルカ島に出かけます。しかし、地中海の温暖な気候を求めた彼らの期待に反して、来る日も来る日も雨ばかり。ある夜、ショパンが1人でピアノに向かっていると、外は激しい雨。サンドの帰りを心配しながら、雨の音を全身で聞き取り、一気に書き上げたのが、有名な「雨だれの前奏曲」です。ショパンの数多くあるピアノ曲の中でも、多くの人に愛されている曲の一つです。
クラシックの作品で、雨をテーマにした曲はいくつもありますが、ドビュッシーの「雨の庭」も良く知られています。季節は夏、パリの木立の上に、軽い夕立が降り注ぎ、雨の上がりきらないうちに、燦燦と太陽が顔を見せる。フランスの印象派を代表する作曲家が音で描いた、美しい版画の世界です。

 歌謡曲の世界でも、雨を歌ったヒット曲はたくさんありますが、その中でも「長崎は今日も雨だった」は、抜きん出た存在でしょう。1969年に発表されたこの曲は、内山田洋とクールファイブのデビュー曲であると同時に、グループの最大のヒット曲です。長崎を代表する、いわゆるご当地ソングであり、ムード歌謡の代表曲でもあります。

 先日、長崎市内のある病院で、木管アンサンブルポエのメンバーと一緒にコンサートをしました。演奏会場となった病院ロビーには、脳梗塞のリハビリをされている患者さまもいらっしゃいました。皆さん良くご存知のクラシックの小品や、季節の曲、ヒット曲なども演奏し、コンサートの中盤で「長崎は今日も雨だった」を演奏しました。それまで、じっと静かに聴いていらしたある患者さまが、急に大きな声でうなりながら、ワワワワーと一緒に歌われました。ポエのメンバーが、のどを張り上げ、顔をしかめながら前川清風に歌い上げた時のことです。
後で病院スタッフの方に伺うと、この方は、実は失語症で普段はほとんど声を出されない方だそうです。演歌がお好きで、普段からニコニコして演歌を聞いていらっしゃるそうですが、そのときは涙を浮かべながら、声を出されていたそうです。

 ながさき音楽祭2008の概要が決まりました。今年は、音楽ジャンルを広げより多くの方に音楽祭を楽しんでいただく新たな試みがなされています。「長崎の唄、長崎の音」コンサートもその一つです。制作委員会でコンサートのテーマを「希(のぞみ)」とつけました。唄に託された様々な希をステージで表現できたらという願いからです。
長崎は、ほんとうに雨が似合う街です。雨の思案橋、雨のオランダ坂と聞いただけで、何かエキゾチックな、美しいイメージが浮かびます。多くのヒット曲を生み、そして唄の舞台となった長崎。私たちの財産である長崎の唄を特集したコンサートが、9月28日にブリックホールで開かれます。

(長崎県音楽連盟 堀内伊吹)
(長崎消息2008年5月号から)